2008年8月30日土曜日

英米法:フィードバック 大陸法:フィードフォワード?

池田信夫先生の新著「ハイエク 知識社会の自由主義」に制御をやってる人間に面白そうな一説があったのでご紹介(実のところ池田信夫blogでも以前からこのことに関する記述はちょくちょくあったのですが,ほどよくまとまっているので.):

 英米法では、裁判所が実質的に法律をつくるといわれるほど、司法の立法への影響力が強い。日常的な紛争処理もすべて弁護士がやるため、法律家が紛争を作り出しているとの批判もある。また明文化されていない慣習法に依存する前例主義が、司法を保守的にしていると批判されたりもする。国家が分権的なので、意志決定の一貫性や安定性に欠け、行政の決めた規制を議会が否決したり、議会が作った法律を裁判所が意見を判断したりすることがしばしば起こり、効率が悪い。しかしシステムが間違いに強いように設計されているので、軌道修正しやすく、柔軟性が高く、大きな変化に強い。たとえばインターネットが普及しはじめたころ、アメリカの電話会社はデータ通信を独占しようとしたが、FCC(連邦通信委員会)は、電話会社がデータをコントロールすることを禁じた。そのため、いろいろなプロトコルが乱立した結果、どのコンピュータでも読める無料のTCP/IPが普及した。

 大陸法の長所と欠点は、この逆だ。すべての権限が行政に集中し、立法も司法も事後的に審査する役割しかないので、遅れて国内統一や近代化を進める国が、国力を総動員するには向いている。大陸法を輸入した日本が近代化に成功し、英米法をベースにしたインドの近代化が遅れたのは、その一例だ。また行政が企業の利害調整を行い標準化も進めるので、携帯電話の欧州標準GSMのように、それが当たった場合は成功する。しかしISDN(デジタル通信網)のように、誤った標準を選んでしまった場合は、欧州全体がその失敗から脱却するのに時間がかかる。


どうでしょう、英米法はフィードバック的、大陸法はフィードフォワード的じゃないでしょうか?ちなみに上の記述は、日本は大陸法以上に極端な行政集権になっていますよ、という話に続いていきます。

二自由度制御のように両者のいいとこ取りができれば良いんでしょうが、国家の制度ゆえ難しいのでしょう。それに、英米法のような「効率が悪いが間違いに強い」システムは、英米のように海に囲まれており本土に脅威が迫るまでに時間的ゆとりがある地政学的な特質の上で成り立つものなのかもしれません。実際、陸続きで他国の脅威に接してる韓国や中国、フランス、ロシアなどは中央集権的な政治機構となっています。

日本が極端な中央集権になっているのは、近代国家としての枠組みができたのが海から欧米列強諸国、北からロシアの脅威が迫っていた時代であったからでしょう(むしろそういう状況でなければ明治維新は起こりえなかったでしょうが)。大日本帝国はアメリカにボコボコにされて一旦滅びたじゃないかと仰る向きもあるかも知れませんが、明治以来の官僚機構はGHQによる統制の中も生き残っています。ただ、独裁者がいるわけではないので、日本人の多くは「我が国は独裁的な国だ」とは思っていないでしょうし、官僚の方々にも「俺たちがこの国を支配してるんだ」という意識はあまり無いと聞いたことがあります。

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