2007年11月7日水曜日

ウィンストン・レナード・スペンサー=チャーチル

それでもあきらめなかった24人の偉人」.

偉大な人たちが紹介されていますが,この中で僕が特に好きなのはチャーチルですね.
第2次世界大戦の時は我が国の敵に回った人ですが….「もし日本軍が東南アジアのイギリス・オランダ領に限定して攻撃してきた場合は守るすべがない」という悲観的な見立てをしており,また戦艦プリンスオブウェールズが沈められたときは「周囲に人がいなかったことに感謝した」というほど狼狽したそうですが,アメリカを味方に参戦させた後は最終勝利を確信したそうです.こういう先の先が見えてる人ってのは,かっこいいなあと思うのです.簡単に言えば戦術眼でなく戦略眼がある人が好きです.

チャーチルといえば共産圏との戦いを予言した「鉄のカーテン」が有名ですが,第2次世界大戦中,ルーズベルトが日本の無条件降伏に拘るためチャーチルは「日本軍の名誉を重んじた決着の方が良いのではないか」と言ったところルーズベルトは「真珠湾を騙し討ちした以上日本に残されるべき名誉など残っていない」,スターリンは「無条件降伏などと言わず,降伏させさえすれば後は好きにできるではないか」と言ったそうです.いかにも英米露を代表するような意見で面白いのですが,チャーチルは日本の軍事力を完全に潰してしまうと後々別の問題が出てくること,具体的には共産圏の勢力を伸ばすことを予見していたのかもしれません.

そういやデスノートの魅上が「尊敬する人物」にチャーチルを挙げていたなあ.なんでだ?

理科系の作文技術」(木下是雄著,中公新書.1981年に出版され現在まで57版の名著です.初版が古いため手書きの原稿執筆やOHPによる学会発表を前提にした話が多いですが,理系必読の書です)に,チャーチルに関するちょっとしたエピソードが掲載されています:

1940年,壊滅の危機に瀕した英国の宰相の座についたウィンストン・チャーチルは,政府各部局の長に次のようなメモを送った.

我々の職務を遂行するには大量の書類を読まねばならぬ.その書類のほとんどすべてが長すぎる.時間が無駄だし,要点をみつけるのに手間がかかる.
同僚諸兄とその部下の方々に,報告書をもっと短くするようにご配意願いたい.

  1. 報告書は,要点をそれぞれ短い,歯切れのいいパラグラフにまとめて書け.
  2. 複雑な要因の分析にもとづく報告や,報告にもとづく報告では,要因の分析や統計は付録とせよ.
  3. 正式の報告書でなく見出しだけを並べたメモを用意し,必要に応じて口頭で補った方が良い場合が多い.
  4. 次のような言い方はやめよう:「次の諸点を心に留めておくことも重要である」,「…を実行する可能性も考慮すべきである」.この種のもってまわった言い廻しは埋草にすぎない.省くか,一語で言い切れ.思い切って,短い,パッと意味の通じる言い方を使え.くだけすぎた言い方でもかまわない.

私のいうように書いた報告書は,一見,官庁用語をならべ立てた文書とくらべて荒っぽいかもしれない.しかし,時間はうんと節約できるし,真の要点だけを簡潔に述べる訓練は考えを明確にするにも役立つ.
後に『第二次世界大戦回想録』でノーベル文学賞を取ることになるチャーチルですが危急の時は機能性を取った訳で,柔軟な人だったのかも.

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