先日読んだ本「イギリスを知るための65章」に日英同盟に関して面白い一節があったので引用.夏目漱石のイギリス留学中のお話:
彼の留学中、1902年には日英同盟が締結されたが、その折にイギリスの新聞の片隅に小さく報道された同盟締結のニュースを読んでいたイギリス人が「いいことだ」"Good Business" と一言で片付けるのを見て、漱石はイギリス人にとっては取るに足りない小さな存在でしかない祖国日本に思いを馳せたのである。つまり、ロシアを牽制するためとはいえイギリスと対等に同盟を締結することができただけで国を挙げて大喜びする日本と、新聞の片隅の記事を見て「いいことだ」の一言で片付けてしまうイギリスの落差、実はこれは明治のはじめから今日まで我々が引きずっている日本からのイギリスへの片思いなのかも知れない。この文章は日本からイギリスへの片思いということに話を押し込めている印象がありますが,日英同盟への反応に大きく落差があったのは単に国力の差の問題で,当時の日英間の国力差は現在の日米間よりも大きかったでしょうから,同盟締結の価値が相対的に違ったのは当然です.
あと付け加えるなら,日英同盟のイギリスにとってのメリットを冷静に考えて「いいことだ」と評するイギリス人の国民性もあるかもしれません.名誉ある孤立が失われて悲しいなあみたいなことを言わないあたりがいかにもイギリス人.日英同盟はイギリスにとっては
- 極東方面におけるロシアの勢力伸張を抑えたい
- 日本が三国干渉のあと軍事費を注ぎ込んで日本海軍が同盟に値する戦力になった
- イギリス以外の列強が海軍力を増強させてきたため(1901年の時点でイギリス所有戦艦数が45隻,フランス+ロシア所有戦艦数が43隻)極東方面に海軍を派遣する余裕がなくなってきた
なお日英同盟は締結当時は攻守同盟ではなかったため日露戦争ではイギリスは終始中立の立場を建前上では貫きましたが,ロシアが購入しようとした戦艦2隻をイギリスが自国用に購入したり,建造途中の巡洋戦艦の情報を日本に流してくれたり(日本が購入し「日進」「春日」として日本海海戦で大活躍),日進と春日の回航にロシアの艦隊が(日露が開戦した途端に撃沈しようと)追尾してきたときに間にイギリスの軍艦が割って入って護衛してくれたりと,日本にとって大変大きな利益となりました.
結果的にも日英両方にとって日英同盟が Good Business であったことは間違いなかったようです.
0 コメント:
コメントを投稿