2008年1月18日金曜日

市場解放から始まった中国の繁栄と弱点

岡崎久彦さんの「戦略的思考とは何か」(中公新書)は初版が昭和58(1983)年8月の古い本ですが,この第七章「戦後世界の基本構造」に中国が軍事戦略的に見てどういう国かが書いてあります.書かれている内容をおおざっぱに言えば「(当時の)中国は防御力は抜群にあるが,外に打って出る攻撃力は弱い」です.この第7章の最後には,面白いことが書いてあります:

最後に一つ、「中国は弱みのない国だ」という私の意見を中国人に話したところが、その人は「実は弱みができてしまった」と話してくれました。「何だ?」と訊くと、苦笑しながら、「国民が生活水準を高めようという願望、これだけにはもう勝てない」と言っていました。いかにも含蓄のある言葉で、今後の日中協力関係の方向についての一つの示唆となりましょう。


さて,現在の中国はというと凄まじい経済発展を遂げ,以前軽く触れたようにそれを基にして軍事費を20年連続10%以上増額するという大軍拡を遂げました.実態は正確にはわかりませんが,おそらく昭和58年の頃に比べれば外への「攻撃力」は相当にあるでしょう.
で,物騒な想定ですが本当に中国がアメリカと戦争をした場合,どのくらい戦闘を継続できるのか?というStrategy Pageの論説が岡崎さんの世界の論調批評で紹介されています.中国の石油備蓄は30日分に過ぎず(日本は約半年分備蓄),またその不足以上に経済問題が中国を苦しめることになるかも知れない,という話です.
戦争と、その結果の経済封鎖――考えてみると、大いにあり得ることです――による、中国の経済的社会的混乱は、今まで誰も考えていなかったシナリオです。先端企業は外国から部品が入らず、輸出企業は輸出先を失い、燃料原料食料の輸入は止まり、企業活動が低下して大量の失業者が出た場合、中国はどうするのでしょうか。
前述した中国人の話の通り,経済の発展によって(軍拡が行えた代わりに)弱点を抱えてしまった訳です.

もし中国の経済がこれからも破綻無く発展しいつか中国人の大半が台湾よりも豊かな暮らしを取るようになれば,東アジアも平和になるのかな?そう考えればこの「弱点」も,東アジアおよび世界全体にとっては良いことです.

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